3月末がバックパッカーとして世界を旅していたというおっさんの最終出社日だった。
着任してから彼の身の回りには、ちまちまとした雑貨が増えていったんだが、どれも100均で買ってきたものらしい。すべてごみ箱に捨てて、カバン一つで執務室を後にした。その身軽さに、なにか旅人の姿を連想したんだよな。
特になれ合う関係じゃなかったが、最終日、彼の旅行写真などを見せてもらったこともあり、執務室で「ご苦労様でした」と送り出すのは味気ないと思って。
エレベーターホールまで見送り、頭を下げる僕に「いろいろありがとう!お世話になりました。さよならっ!」と最後は軽く叫ぶような彼の声が落ちてきた。
その姿は長距離バスか鉄道の窓から別れを告げる旅人のようだった。
身軽な人だなあと思った。
自分はどんなことであれ別れが嫌いな人なので、あの妙にカラッとした別れ方がなんかうらやましいと思うほどだった。
仕事はできない人だったんで、いまは使えない引継ぎ資料の山に頭を抱えているんだけどね。(w
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