ここはもう、晩秋を通り越して初冬だった。
ブナや樫などは落葉を終え、枯れ枝の向こうに青空が広がっている。
屏風のようにそそり立つ戸隠連峰から、ときどき強い風が吹き下ろしてくる。
子供の頃に覚えた「大寒、小寒、山から小僧が飛んで出た」という唄を思い出した。
朱い随神門を超えたあとは、杉並木を眺めながら奥へと進む。
2度目の来訪なので、きつい階段も楽さを感じる。
空がやたらに美しかった。
参拝を終えて、駐車場近くの茶屋で休んでいるとき、ちょっとしたつむじ風を見た。道路に散らかった唐松の枝を巻き上げ、茶屋の幟をなぎ倒すくらいの勢い。山に神がいるのかどうかは知らないが、秋の終わり、冬の到来を予感させる光景だった。
クルマを移動させて、うずら家で早めのランチを摂った。
リストに名前を載せるため、僕は5時台に宿を抜け出してうずら家に行った。まだ薄暗い明け方で、すでに自分がリスト5番目だったことがすごく悔しい。というか、誰だ、こんな朝っぱらから名前を書きに来たヤツは!?
定番のおいしさ。
ごま油でカラッと揚げられた天ぷらはクオリティ高い。
口の悪い客は、蕎麦の味は悪くなったが、天ぷらの味は良くなったと言うほど。
うずら家を出て、クルマを東京へ向ける。
中央道を経由して、羽田空港まで走って彼氏を送る。
羽田空港でハンバーガーを食べながら、とりとめのない話をした。
空港レストランの、別れと出会いが混じり合っているあの空気感はとても好きだ。
保安場の向こうへ彼氏が姿を消すまで手を振ってから、僕は家路につく。
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