上野で花見をした後、カフェにこもってMacBook Airにひたすら打ち込みをしていた。
そして夕方から始まる回の「イミテーション・ゲーム」を見に行った。
心臓を掴み出されるような、映画を見て、こんなに胸が痛くなったのは初めてだった。
英国の天才数学者アラン・チューリングの数奇な運命を描いた作品。
メインはナチスドイツが運用していた暗号「エニグマ」の解読のため、現在のコンピュータの原型となる暗号解読器を制作するあたりか。確かにすごい話だった。
その前に……チューリングが同性愛で逮捕されるんだけど、最初のシーンからね、チューリングがアスペルガー症候群の人だということが暗示されるのだ。いや、数学者だから変人、天才だから変人、というワケじゃなくて、あれは典型的なアスペルガーなんだ。「アスペルガーのうえに、ゲイだったのか」……もう見ていて痛々しくて仕方なかった。
もしも、彼がただのアスペルガーだったら、世間と折り合いが悪くても、変人学者として長生きできたかもしれない。もしも、彼がただの同性愛者だったら、新聞沙汰になることもなかったかもしれないし、英国が住みづらければ国外に出るなりやり方はあっただろう。だけど、彼はそういう器用さはなかったんだろうな。そして同性愛で有罪判決になった彼は、1年間の女性ホルモンの投与を受けたのち、自殺する。性ホルモンが乱れると、人間は鬱病になりやすくなり、自殺者も出る。性転換者にメンヘラーが多いのはそういうわけで。当時の処置は本当に酷い話なのだ。
それにしても、なんというか……パブリックスクール時代の同級生に抱いた淡い恋心と、一度婚約したあと破断した女性数学者を除いて、チューリングは愛を知らない生涯だったのだろうか?それは彼が不器用だったせいなのか、それとも同性愛者だったからなのか??なんだか、チューリングが哀れで仕方がなかった。
※追記あり
そういえば、以前、アナザー・カントリー、モーリスが流行った時期があったっけ。あれも共産主義に傾倒しちゃってスパイになってしまう人の話であったけれど、登場人物がみんな美形だったんだ。結末は結構悲劇なんだけど、それなりに同性愛をエンジョイした時期もあったんだろうと妄想する。だけど……チューリングはあまり美形でもなかったんだよね。しかもアスペでコミュニケーションも色々大変そう……そんなことを思ったらますます切なかった。
こんな美形だったらね……。
追記:
一晩経って、チューリングが暗号解読器に「クリストファー」と名づけていることを思い出した。映画を見ていない人にはなんのこっちゃだが、クリストファーとはパブリックスクール時代、チューリングの唯一の理解者で親友で、そしてチューリングが恋した同級生の名前。だが、生身のクリストファーは結核で早逝してしまう。
チューリングは機械は意識を持つかどうかについて、刑事と議論をする。その中でチューリングは、意識を持つかどうかは機械になってみないとわからないという。
チューリングは、いずれクリストファーが意識を持つようになると考えていたんだろうか。いまは機械が意識を持っているかどうかなんてわからないけれど、いずれ彼が生涯で唯一愛した少年を再生して、なにか語り合う日のことを夢見ていたんだろうか? チューリングは愛された記憶は少ないかもしれないけれど、深く愛した記憶を生涯抱えて生きていたんだね、
山中ヒコ「500年の営み」を思い出したよ。
0 件のコメント:
コメントを投稿