地下30Mに作られた脱走不可能な監獄、合衆国刑務所「アンダー・グラウンド・ホテル」。太陽に見放されたこの場所を楽しめる者だけが、ここを「アンダー・グランド・ホテル」と呼ぶ。
享楽的なセックスに耽る監獄のシャットコール・エリーが見ているのはいつも、犯している相手ではなく、ノーマンただひとりだったー。
過去のトラウマから自傷行為を繰り返すノーマン、彼を優しく癒やすドクター・ヴァン、憎しみにも似た激しい愛をぶつけてくるエリー……。
閉ざされた世界で絡み合う、それぞれの思いの行方は……。
ストーリーテラー・定広美香が描く大人気「アンダーグラウンドホテル」、待望の新編!
うーむ。。。。
ややこしいので「アンダーグラウンドホテル」に統一するが、このシリーズは定広美香の代表作だといって良い。だがしかし、代表作で、監獄の話であった事だけしか記憶に残らない、中途半端な作品であったというのが僕の印象だ。
古い少女マンガの「1ページ目からクライマックス (w」みたいなのりで、本編はいきなりセックスシーンから始まるわけなのだけど、人間関係が頭に入っていないから、読者置き去りで「おっぱじまって」しまい、おばちゃんみたいに「あらあらあらあらあら~」と呆れるしかないわけで。
セックスから始まっても、別にいいんだけどね……。
「監獄」ものって、結構難しいジャンルだと思うのだ。
BL小説では木原音瀬による「箱の中」「檻の外」、そして「すすきのはら」へと続く名作がある。英田サキによる「DEADLOCK」もあったな。ここには「オレは必ず『檻の外へ出る』」という希望がある。読者もそれをどこかで期待し、応援もしている。
だがしかし、オリジナルのアンダーグラウンドホテルに対し、続編2作は地上に出るどころか、ますます地下へ潜って行っちまうわけで、読者としてはいったい何の話に付き合わされているのかいまいちスッキリしない。
しかも……地下監獄という設定、定広美香の作風が悪い相乗効果を生み出している。学生の頃、廃墟になっているアルカトラズ島の観光ツアーに参加した事がある。監獄の並ぶあの長い長い通路を歩いている時、不思議な空気感を感じた。いまは無人なのに、かつてそこにたくさんの囚人がいたという空気感。人がいる場所には、なにかそういう独特のものが生じてくるはずなのだ。だがしかし、定広の作風ではそういう空気感が感じられない。登場する場所も限られていて、まるで予算不足の小劇団の舞台セットのようだ。説得力がまるで無い。
こういう状況では、例えば「羊たちの沈黙」のように、サイコパスの心の迷宮に下って行くようなストーリーだったら盛り上がるのかもしれない。だけど、定広が描いている続編2編は、不良だらけの高校か、猿山のボス争いを眺めているようで、なんとも……しょうがないなぁ。
1.絵柄
いつもながらの定広クオリティ。
筋肉質だし、キャラクター造形も悪くはない。
2.ストーリー
正直、微妙だと思う。
3.エロ度
筋肉質で絶倫の美形がヤリまくってる。やってる回数も多いし、描写しているページも多い。だけど…なんか、無菌室で絡み合っているふたりの男を観察しているようだと言ったら良いのか……。エロいようで、実はエロくない。ポルノなんだったらもっともポルノらしく濃厚に描く方がいい。派手に喘げばいいし、汁物も派手に飛ばせばいい。顔もアヘ顔だっていいだろう。だけどアンダーグラウンドホテルはそうではない。
じゃいろいろな過去や葛藤があったふたりが、ついに結ばれるという「情念」を軸にした作品だったら、もっとエロく感じられたもしれない。あるいはウリ専みたいに、セックスを切り売りしている少年の「悲哀」だったら、もっと感情移入出来るかもしれない。
暴力とセックスを売りにしているような監獄ネタで、この中途半端さは読んでいてつらくなる。
4.まとめ
このシリーズのさらに続編について、定広はあとがきの中で「私の脳内には、すでにプロットが出来ていて、タイトルも決まってるのですが、描かせてもらえる場所が今のところ無いので、いっそ同人誌にするか迷ってます。でもやっぱり、いずれ単行本にしてもらえるようなところで原稿料いただいて商業ベースで描かせてもらうのが夢です」と書いている。うーむ、僕が編集の立場だったら、殺人がしょっちゅう発生する暴力性やエロについて躊躇しているのではなく、作品としてつまらないと考えるのではないか。絵柄やエロはともかく、ストーリーに問題ありかと思う。
絵柄 :★★★☆☆
ストーリー:☆☆☆☆☆
エロ度 :★★☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)
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