お久しぶりの富士山ひょうた。
最初に結論を言っておこう、これは失敗作だと思う。
ゲイの宮田は、仕事相手の伊倉から仕事を盾に交際を強要されてしまう。強引な伊倉に対して苛立ちを募らせる宮田だが、気づけば引きずっていた過去と決別することができた。ついに正式に恋人として付き合い始めるが、伊倉は自分の衝動のままに宮田を抱いてしまう。混乱から伊倉を避ける宮田だが、変わっていく自分と向き合う決心をし、再び彼と身体を繋げ--。
僕は富士山ひょうた作品に比較的好意的だと思ってる。
それなりに彼女の作品を読んできたと思ってるし、下弦の月シリーズの他はだいたい揃っている。その上で言うけれど、彼女の作品には時々「いったいどんなテンションで描いていたのやら?」とか「モチベーションはなに?」みたいなものがある。富士山作品はわりと低テンションが通奏低音となっているのだけど、だがしかし、「不測ノ恋情」シリーズは酷すぎる。
「不測ノ恋情」は名作「純情」のスピンアウト作品だから書評もきつくなる。番外編は本来ならば本編となだらかに関係を保ち、本編の余韻を楽しみながら「二度美味しい」のがセオリーだ。ところが、あらすじが語っているように、倉田≑伊倉(つまり強引なバイセクシャル)という同じ軸を中心に据えると、戸崎と宮田の差異がくっきりと浮かび上がってくる。なんだかんだ言っても倉田が大好きでワタワタしている戸崎の愛らしさに比べて、はっきり言うと宮田の人物造形はつまらない。確かにいろいろな恋、愛の形はあるとは思う。だが、これだけテンションが低いと恋愛していると言えるんだろうか??
ということもあって、なんか不完全燃焼な話でコミックス3巻まで引っ張れたのは、それなりにビックネームのお陰なのかもな、と思ったりもしたよ。
1.絵柄
僕は富士山ひょうた作品の絵柄は全般的には好きだ。だが、本作はあんまり魅力を感じない。伊倉がイケていないのか、宮田がイケていないのか???
2.ストーリー
バイセクシャルの伊倉と、ゲイでタチな宮田のお話。タチなのにネコやらされるのは男としてのプライドがetc。なんというか、なにかがちがう。なにかが間違っている。ゲイカップルだったとしたら、いや、男同士でつきあうなら、タチ・ネコ問題はわりと早く決着がつく。リバだっていいんだし。のわりには、伊倉はタチに固執するし、ネコやらされている宮田もタチに固執する。身体の相性が悪いのならばとっとと別れればいいのだし、相手が好きならばお互い妥協すれば良いんだし。意地張ってグルグル悩んでいる事柄がBL的にもリアリティがない気がする。
3.エロ度
伊倉のボディラインとか結構上手いんだけど、ストーリーがぎこちないのでエロさもまるで炭酸の抜けたコーラのよう。
4.まとめ
好き好きだとは思うけれど、僕は失敗作だと思う。同じスピンアウト作品で「それでも、やさしい恋をする」を読んだ後なので、なおさら本作の粗が目についた気がする。純情が良くできていた分、本作のがっかり度は半端ない。
絵柄 :★★☆☆☆
ストーリー:★☆☆☆☆
エロ度 :★★☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)
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