続く大掃除

先週から部屋の大掃除が続いている。
今日もたくさんものを捨てた。

20代のころに書いた仕事のメモ。クライアントからもらった資料etc。
僕はすぐに人の顔と名前を忘れてしまうのだが、資料を破断していると、そのころお世話になった人たちの顔が一気によみがえってきて少しなつかしかった。
この文章を読んでくれている人の筆跡もそこにはあった。元気で暮らしてくれているといいんだが。

最後に残った何冊かの文庫本。それもまとめて捨てた。
大学生のころ、初めてまともにつきあった男と選んだ本だった。

高校時代にデビューしてから、しばらく特定の人とつきあうことはなかった。
とにかく楽しかったから。
飲み屋に行けば適当に遊んでくれる人は不自由しなかったし。
目の前に供される肉を行儀悪く食い散らかしていたのが当時の僕。

彼は当時28歳。
蒸し暑い八月の夜、あてもなくフラフラしていたところに声をかけてもらったのがつきあうきっかけだった。特にタイプじゃなかったけれど、甘やかすのと、躾が巧みな人だった。同年代の子キャマたちとはちがう空気をまとっていた。

デートの待ち合わせはホテルのロビーが多かったから、その場にふさわしい服装と立ち居振る舞いを身につけることを求められた。もともと僕自身がそういう場所を好きだったのだろうが、人の行き交うロビーで胸を張ってピシッと背を伸ばし、適度な緊張感を維持しながらもリラックスしているスタイルをおぼえたのもこのころだ。
食事するときの基本的なマナー、クルマやエレベータに乗るときのマナーなど、いま考えると新入社員のマナー教室みたいなことをやっていたような気がする。(笑)
身につけずに終わったものの一つは、彼もたばこを吸わなかったから、僕はいまでもライターの火を差し出すことができない。

ふたりきりになったときは、相手を誘うキスの仕方から、緩急さまざまなSexのバリエーションを一通り教えてもらった。……とは言っても、年上受けの年下攻め(笑)でしたから、開発されたというよりは、行為を通じてふたりの呼吸を合わせる方法を知ったという方が正しいのかもしれない。

心も身体も、誰かのために熟してゆくってどんな感じだろう……
心も身体も全力で、あなたを想って、熟れてゆくのに

今日そんなフレーズを見かけた。
あのころ、彼の世界をもっと理解したくてEsquireを読んだりしてた。
いま考えると彼は僕のことをデキャンタージュしていたんでしょう。
彼の期待に応えたくて一生懸命背伸びしていました。

今日紐で括った数冊の本は、そんな彼氏とつきあっていたころの記憶。

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