BL漫画レビュー:走っていく日、キラキラと愛を知る

今日の素材は高橋悠 『走っていく日、キラキラと愛を知る』
美しいタイトルだ。その語感に魅了されてしまった。

ある日、保育士の杉本のクラスに若い親子がやってきた。園児の父親・瓦緒(本名は杉本)に恋した杉本は猛烈なアタックを開始するのだが……。

高橋悠の描くキャラクターデザインは僕好みだ。正直言えばそれほど描き込まれた画面ではないのだが、キャラクターに華がある。それって大事なことだと思う。
で、 ストーリーなんだが、これがなかなか暗い(笑)。ついでに言うと、話の展開があまり上手じゃない。二人とも元暴走族あがりなんで、どうしても暗い過去ってのがくっついて回るし、フラッシュバックの展開がどうもイマイチ。連れ子の園児はワケありだし。なかなか恋バナにまっすぐ進んでいかない。

舞 台設定は不明。雪が降って、漁港があって、地方都市。北海道あたりだろうか?寒い地方都市にある小さな保育園。父子家庭のアパート。灰色に塗りつぶされた町とは言わないが、すべてがこぢんまりとまとまっていて、大都市のような劇場空間の中で演出される出会いなんか、ない。
その昔、移住できるゲイは都会に出てきた。ネットが発達していない頃、彼氏やゲイ友を見つけるためにはゲイ人口の多い都会に出てくるしかなかったから。たとえば新宿2丁目のような Gay Townがあり、渋谷、青山、下北のようなファッションとアートに触れることのできる場所があるから。桜沢エリカの"サロン"はそんな生活を描いている。

でも現実にはみんながみんな都会でゲイライフを謳歌するわけではなく、地方で生まれ、地方で育ち、平凡な日々の中で、キラキラと煌めく想いを抱きしめながら、健気にそして懸命に生きている。そんなゲイの姿に僕はちょっと憧れる。

この作品の中で大きなウェイトを占めているのが"家族"
瓦緒は高校時代既婚者の教師に恋し、そして彼の遺児をつれて北の町に帰ってきた。
その子は実の母親から幼児虐待を受けていた。瓦緒も少年時代に虐待を受けた経験を持つ……こんな要素が加わると、BLの範疇を超えている。なにか違う系譜に属する作品なのかもしれない。

子は鎹と言うけれど、男女+子供が生まれれば自然と家族だし。社会的にも男女が一緒に暮らしていれば家族だろう。でもゲイは夫婦?を続けるためにはものすご い努力が必要だし、それは翻って男女の夫婦にも言えるはずで。愛情のバランスが崩れたり、片方が愛を乞う人になってしまうとまたバランスが崩れる。恋人の 間は相手の顔を見つめていればよいが、夫婦になったら横に並んで同じ方向を見て生きていけ、というのが個人的先達の言葉でした。

作品の中では母親が子供をゲイカップルに預けて帰ってゆく。ちょっと都合がよすぎるかなという気もするが、プロの保育士もいることだし、ゲイの子育て願望を叶えてハッピーエンドか!?

1.絵柄
一瞬手抜きのように見えますが、独特の華やかさのある絵柄

2.ストーリー
BLだけど、いろいろな要素が含まれていて、BLの範疇を超えている。だけど多くが未整理なのでもちょっとうまく処理して欲しかった。特に瓦緒の学生時代から先生の奥さんとの関係についてのエピソードは展開が乱暴だ。

3.エロ度
エロシーンはほとんどありません。

4.まとめ
BLじゃないのかな、これは。作者はBLとは別のこと(それは"家族"というテーマかな)を伝えるために、あえて♂×♂の主人公を使って物語を書いたのかも。

絵柄 :★★★★☆
ストーリー:★☆☆☆☆
エロ度 :☆☆☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

0 件のコメント:

コメントを投稿