「ひとり、目が覚めるたび思い出すーー昔 あのひとに抱きしめられた体温を」
妹の借金を返済するため、ゲイ向けデリヘル「Rain」の人気男娼・シロの付き人として働くことになった信虎。
信虎の顔と体が好みだと言い、セクハラを繰り出してくるシロに対して、一線を引いて仕事をする日々だったが、ある夜、客からの暴行で傷ついたシロの姿とふいの言葉が忘れられなくなってしまい……。
欠けて凍えた心の奥底には、愛への狂おしい呻きがあった。
男娼と付き人ーー交わされる、声なき咆哮。
この手のスタイリッシュ(?)な画風のBLは、結構な確率でスベる……という個人的経験を持っていて、買おうかどうかかなり逡巡した。結局買ってみたら、Not too Badな仕上がり。
信虎は、マルチ商法にはまって800万円の借金を作った妹(マシュマロ系女子……頭の悪い女っていう暗喩だな)のために、ウリ専ボーイ(ゲイの世界では男娼という言葉は使われない)送迎ドライバーの仕事に就く。ギャラは2万円×30日。高額ギャラに惹かれて、信虎はウリ専業界と関わり合いを持つようになる。
信虎が送迎する「シロ」は、Rain一番の稼ぎ頭。
思春期の頃から男のペニスを咥え、ザーメンにまみれて生きてきたシロは、セックス=¥になってしまっている。
客の望むプレイをなんでも受け入れて、傷だらけになっているシロに「なんで……こんなこと……」と問う信虎に対し、「俺はこれしかできないって。犯されて、殴られて、おっさんの汚いザーメン飲んでなきゃ生きられない変態野郎……それが俺なんだよ」とシロは言う。
かつてシロをすくい上げようとした元ヤクザがいた。
彼とこの町から逃げようと決めた日、元ヤクザは命を落とした。
それ以来、シロは誰も好きになれなくなった。
大切な人を失うことが怖くなり、自分は一生「売り」しかできないと思うようになった。
「シロさん、何泣いてんですか?
俺はいなくなったりしませんよ。
ずっとこの手を離しません。
あんたが好きなだけです」
こうしてシロはすくい上げられた。
漫画とは関係ない個人的な話をするけれど。
僕はウリ専ボーイを何人か見てきた。
もちろん、ウリ専ボーイを買ったわけではなくて、彼氏とたまに飲みに行く新宿二丁目のバーがウリ専の経営で、カウンターの中にいる店子にウリ専の子がいる。ウリ専のページでは、その子に値段が付けられて売られていて、不思議な気分になる。お酒を注いで時給1000円〜みたいな世界と、一晩で何万円かの世界を、この子は渡り歩いているんだなあと。
客席にも客とウリ専ボーイが座っていたりする。
中高年と二十歳前後の若い男の組み合わせなのだから、違和感はかなりある。
元ボーイに話を聞いたら、もちろん客はボーイにセックスを求めてくるのだけれど、指名が続くとだんだん体の関係はなくなって行き、一緒にご飯を食べたり、バーでお酒を飲む関係に移行することが多くなるんだそうだ。性欲はさておき、人ってだんだんさみしくなるんだろうね。そのさみしさの埋め合わせにまずはセックスを求めるのだろうけれど、それで根元的なさみしさが埋まるわけではなく……うん、人はやっぱり寂しい生き物なんだろう。
ゲイバーのカウンターの中で僕と彼氏の前に立っているのは、有名大学の学生だったりして、あんまり変な人はいなかった。まあまともな方だった。ブランド品を手っ取り早く手に入れたいだの、留学の費用を貯めるためだの、彼女を妊娠させちゃって費用が……みたいな、ある程度期限がある連中だった。噂によれば、ちょっと頭の弱い子、メンヘルでセックス依存症になっている子とかもいるらしいが、そういう子は見たことがない。
もう随分古い話になるけれど、新宿二丁目にはドンと呼ばれる人たちがいたという。
終戦後、歌舞伎町が復興してきた頃、女装の男娼として立ちんぼをしていて、そこで貯めた金を元手にウリ専業を始めた。ウリ専業はとても儲かる商売で、そこで貯めた金でバラエティショップを開いたり、ゲイバーを経営したりだの、文字通り裸一貫からのし上がった人がいたのだという。僕らが昔話を聞いていた人に「あの不審火の話は本当?」と尋ねたら「随分古い話を知っていますねぇ。本当よ」という答えが返ってきて、その時は戦慄したことを今も覚えている。歴史は続いているのだと。
1.絵柄
悪くはない。スタイリッシュな感じ。
少女漫画のような線の細さではなく、筋肉質な感じの描写は悪くない。
2.ストーリー
ウリ専ボーイと付き人ドライバーという、ストーリー的には捻りなし。
「俺は体を売るしかないんだ!」って相手の心をどう溶かすのか、それだけ。
「俺 好きな奴に抱かれるの初めてだから」……と涙を流すシロ。
ハッピーエンドでよかったね。
3.エロ度
ウリ専ボーイだから、かなりいろいろなことをさせられていてかわいそう。
シロちゃんdeep throatもOKそうね。
4.まとめ
悪くはない。
だけど1年後に記憶に残っているかと言われたら、ないかな。
絵柄 :★★★☆☆
ストーリー:★★☆☆☆
エロ度 :★★★☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)
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