ラヴェッロの鐘楼と坂道 2011年欧州旅行記-33

ビリビリと苦いレモンチェロを、レモン味の甘いジェラートで流し込んでいたら、なんだかお腹いっぱいになってしまった。レモン+レモンは、レモンのマリアージュで旨さ倍増かしら?と想像していたんだけれど、なんか、ちょっと予想は外れた感じだ。

すぐにはお腹が減るわけでもなく、彼氏には「じゃー、ラヴェッロに行ってみない?」と誘ってみた。アマルフィからラヴェッロへはバスで移動する。アマルフィの港にはバスプールがあって、たくさんのバスが発着する。例えばアマルフィ海岸のバス交通網を見ても、ソレント-アマルフィ間、アマルフィ-サレルノ間と乗り換えが必要で、大型の長距離バスが何台も停車している。ラヴェッロは山の上にある小さな町で、アマルフィから30分に1本のスケジュールでバスが出ている。なにしろ港でバスを待っているので、日差しは強いし、とにかく暑い。

10分ほどでバスが来る。運転手にお金を支払おうとしたら「あそこのタバッキでチケットを買ってきて!」と言われてしまう。ああ、ガイドブックではバスのチケットはタバッキ(たばこ屋さんのこと)で買うとは書かれていたけれど、カプリでは全部運転手に直接支払いできたので油断していた。僕らは脱兎のようにバスを飛び出して、海と市街地を分ける交通量の多い通りを横切って、タバッキに飛び込んだ。

混雑する人混みをかき分けて、カウンターへ突進。
「ラヴェッロ!2アダルト!2Way!」
これでバスチケットを買う。我ながらひどい買い方だと思うけれど、意味が通じればOK。手渡されたバスチケットを持ってバスに駆け込む。始発なので、しばらくバスは停車していたようで、そんなに焦らなくても良かったのかもしれない。12:30頃にバスはアマルフィを出発し、しばらく海岸線に沿って走る。やがて左折して山に向かって回頭すると、今度は山の斜面に拓かれた葡萄畑の間を、つづら折りの坂道を上って行く。所々に車道を横切る古い山道……海岸から山へ続く石の階段がある。時間があったら、トレッキングコースとして歩いてみたら、凄い光景なんだろうな。バスは深い谷に沿って山を登り続け、やがて終点のラヴェッロに到着する。バスを降りると、眼下の、はるか下方にティレニア海が広がっている。山の方に視線を転じると、海からさわやかな風が吹き上げてきて、ゆっくりと雲を押し流して行くのが見える。


ラヴェッロは小さな町だ。バス停の先にはトンネルがあって、そこを抜けると小さな広場に出る。オープンカフェが何軒かテーブルを出していて、そこで皆がのんびりとお茶を飲んでいる。ワーグナーと縁のある町だそうだ。特に知識なしで僕らはフラフラと散歩する。あちこちでカラフルな焼き物が売られている。フランス人らしいきれいなカップルとすれ違った。ブーゲンビリアが美しく咲いている町だった。

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