発売当日に買ってきた『テンカウント5』は、黒瀬のターンだった。
「城谷さんを一番めちゃくちゃにできるのは俺です」
二ヶ月ぶりに再開し、初めて自分の意思で黒瀬の手を取った城谷。
タクシーを拾い二人で帰途につくが、黒瀬は先に降りて、あっさりと帰宅してしまう。
とっさにあとを追う城谷だが……?
っていうか、このピンク髪の男(女?)は誰だ!?
と面食らっていたら城谷だった。
いきなりキャラデザインを変えられると面喰らうわ。
で、テンカウント5はどうなったのか?
以前、テンカウント2で、僕はこういう文章を書いた。
「例えば第3巻で黒瀬と城谷の関係がイーブンのところに戻るほどの過去のトラウマが両者から吹き出してくるのか?
どちらにせよ、恋愛のバランスシートは城谷の負債が大きすぎる。」
この予想が当たったのか外れたのか、怒涛の第5巻だった。
タクシーを降りた黒瀬を追って、マンションエントランスにたどり着いた城谷。
「潔癖症だから好きになった」って言われた時、無性に腹が立って悲しかったのに……同時になぜか俺……。
本当はずっと、誰か、誰かに……黒瀬くんにもっと触って汚してもらいたくて。
いや、俺と一緒に黒瀬くんに汚れてもらいたくてっ……一人で抱えるのは怖いから……っ。
「俺も黒瀬くんのことが好きだ」って言ったら、俺のこと……めちゃくちゃにしてくれるんですよね?
うーん。。。。。。。。
城谷はただのドMなのか?とか思ってしまう一方で、潔癖症を治すために自分が「汚れる」ことに慣れなければならないという強迫観念と、一人で抱えるのは怖いという依存症がない交ぜになっているのかなぁ。
そもそも城谷が潔癖症になった理由は、幼少期に父親が大好きだった城谷少年が、父親に「頭を触ると考えていることがわかる」と言われたこと。父親をセックスに誘い込み、その場面を目撃して思わず自慰をしてしまった少年に「気持ち悪い」という言葉を投げつけた悪い女子高生によって、純粋に父親好きだった城谷少年が混乱した。第4巻の時点では、城谷少年が性的に父親が好きであったという表現はなく、ただ子供らしく親を慕っていただけと思われる。その慕情を「男なのにその慕う気持ちは間違っている」「気持ち悪い」と決めつけられ、城谷少年は父親と手を繋げなくなった。人と接触すると自分の考えていることが漏れてしまうという強迫観念に駆られるようになった。自分が汚れているのか、世界が汚れているのかはともかく、手を洗い続け、周囲をアルコール消毒し続けなければならなくなった。
そういう立場の人がはたして、世界との絆を取り戻すために、めちゃくちゃに汚して欲しいと懇願するものだろうか?
この激情は恋愛から生じたものなのだろうか?
あるいはドMの被虐欲求なのか??
それとも、孤独から逃れたいなどの、もっと別の感情から生じたものなのだろうか??
で、黒瀬のマンションに招き入れられた城谷は、身体の一番深い場所に黒瀬の雄を受け入れる。
あれ?
「もっと、もっと褒めて俺のこと。偉いですねって」……って、城谷が欲していたのは承認欲求だったのか。。。
城谷は自分が汚れた存在だと思っていて、黒瀬を汚すことを恐れている。
だけど、黒瀬に汚されることを望み、共に堕ちてくれることを願っている。
うーん。。。。。。。。
これだと、城谷はただの痛い子だなあ。
あるいは、男(=ゲイ)にはわからない、雄を受け入れる側に立つ女性にしかわからない感情があって、それがたまたまBL漫画に投影されているだけなのかもしれないが、女性にはこういう形の承認と自己肯定の要求があるのだろうか。
で、後半は黒瀬のターン。
なぜ黒瀬は城谷に執着するのか……その過去が明かされる。
簡単に言うと、子どもに無関心の親のもとで育った少年が、近所で孤独に暮らす男と出会う。その男は不潔恐怖症で、子供の来訪をめんどくさがっていたが、完全に無視することもなかった。その男の行動を図書館で調べていた黒瀬少年は「親しい友達なら……」という一節を見つける。
誰も訪れない部屋で暮らす男が、自分にだけは心を開いていると少年は錯覚した。
そして部屋から出て暮らそうかと考え始めた男を、黒瀬少年は部屋に閉じ込め、独占したいと思った。
「俺だけが特別なんじゃないの?」
男が姿を消した後、黒瀬少年は不潔恐怖症の人間の、世間から切り離される恐怖、誰からも愛されていないと感じる寂しさを知り、外に出たいと望む男の背中を押してあげられなかったことを後悔する。そういう人を救ってあげなきゃいけないという使命感は、実はその裏に「自分だけが特別」というポジション確保への執着があり、その執着の対象が現在城谷になっている……という状況。
んー、こうなると着地点は見えてきている。
「不潔恐怖症じゃなくなった俺を、黒瀬くんは好きだと言ってくれますか?」
不潔恐怖症の患者なら、あなたは誰でも好きになったのですか?
俺は黒瀬くんにとって特別だったんですか?
BL的というか、やや少女漫画的な着地点を探ってゆくのだろう。
1.絵柄
相変わらず美麗な宝井理人クオリティ。
乳首の描写に力を注いでいるらしいが、すばらしい!
今後もビーチク道を究めていただきたい。
あと、不潔恐怖症の城谷がやけに細マッチョで結構雄っぱいなんだが、彼がフィットネスクラブに通えるわけでもなく、絵的には美味しいが矛盾が気になるところ。
2.ストーリー
黒瀬側の過去が開示される怒涛の展開。黒瀬の方が闇は深いかな。
独占欲の黒瀬と、被虐の城谷の共依存が、今後どうなるのか気になるところ。
実は、第5巻で城谷は手を洗っていない。
不潔恐怖症克服は近いのか??
3.エロ度
黒瀬の精液を身体に受け止めたまま、差し出されたコーヒーをすする城谷がラブリ〜。
4.まとめ
最近のBL漫画はト書きを棒読みみたいなものが多いが、宝井理人はストーリー展開と、見せ方が卓越していると思う。城谷が黒瀬を煽り、黒瀬が城谷を煽る。そして読者を煽る台詞回しは、最近リリースされるBL漫画のクオリティを突き抜けている。そのまま小説で読んでも相当エロティックだと思う。
あと書籍版と電子版とは修正が方法が違う。ブログの引用ではペニスとおいなりさんの表現がない電子版が扱いやすいが、やっぱりペニスは登場人物たちの欲望を表す大事なツールなはず。ペニスが描かれていないとレズのセックスみたいに見えることに腐女子のみなさんがどう感じているのか尋ねてみたいなー。(w
買って損なし。読んで損なし。
書籍版の方が、黒瀬、城谷の雄が滾っていて、電子版の30%増しな喜びがあるかと。
絵柄 :★★★★★
ストーリー:★★★★★
エロ度 :★★★★★
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)
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