おわら風の盆 (1) - 戸隠高原とおわら風の盆

戸隠高原を出て、富山市を目指す。
朝、9時過ぎに宿を出たので、上越市から一般道を使って西へ下る。
糸魚川、親不知は険しい海岸線を走る。
親不知は古い時代は超えるに超えられない難所であって、それは日本を縦に貫く日本アルプスの北端が海になだれ落ちている場所だからだ。手を広げるように岩の塊が行く手を遮り、そして日本海に沈み込んでいる。

黒部、魚津、滑川に入ってくると海岸線は遠のき、立山連峰を遠くに望みながら富山平野を切り裂くバイパス道路をひた走ることになる。

富山市に入ったのは13時過ぎ。
上空は雲が広がっている。夜は雨が降るという。

ホテルに荷物を預け、総曲輪の「寿司栄 本店」でお昼ご飯を食べる。
ピチピチと新鮮なものを、「キトキト」と富山人は呼ぶそうだ。
最初に供された烏賊の握りはねっとりと甘く、ああ、これがキトキトというヤツかと思った。

カウンターは常連が半分、それ以外はおわら風の盆を目当てに集まってきた観光客たち。僕らが気にしているのは今夜の八尾の天気で、寿司をつまみながら天気と、八尾までの足の話ばかりしていた。Twitterのタイムラインには、富山駅前で客をはき出す観光バスが列を作っているとか、改札が混雑しているとか、八尾の天気があやしいとか、そんなつぶやきが続く。

寿司栄を出ると、パラパラと雨が降ってきた。
今夜のおわらは諦めることにして、僕らはホテルに戻った。
50年ぶりの市内を散策したいという母親に付き添って、路面電車の車窓から街を眺める。富山大学から出発して再び駅前に戻り、カフェでお茶を楽しむ。
窓の外は激しい雨が降っていて、普段は賑やかな高校生たちも足早に姿を消す。

路面電車をさらに乗って、終点の南富山駅まで行ってみた。
上本町を過ぎる頃から、なんだか彼氏と広島港を目指していたときの景色と似ているなと感じた。繁華街を抜けて、車窓には民家、獣医の看板、肉屋、クリーニング屋、そんな生活の臭いが濃厚に立ち上ってくる普段着の世界。学校帰りの倦んだ表情の高校生らを眺めながら路面電車は、立山山麓へ続く富山地鉄駅前に到着した。

結局9月1日のおわらは見送った。
夜、Twitterにアクセスすると「奇跡的に雨が上がった!」「観光客が少なくて最高!」という歓喜の声に激しく悔しい思いをしたのだけど。

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