暁の寺院 (タイ・シンガポール旅行記)

ワット・ポーでバンコクの暑さにやられた僕たちは、金箔に包まれた仏像の足下でしばらく座り込んでいた。開け放たれた窓の外は真白く色を失っていて、緋色の絨毯が敷き詰められた堂内を、大きな羽を持つ三菱製の扇風機がゆるりと風を送っている。年若い僧侶と老人が話し込んでいる声が子守歌のようで、うっかりすると眠りに落ちてしまいそうだ。

「そろそろ行こうか」と彼氏に声をかけて、僕たちは再び陽光にあふれる境内に出た。極彩色の仏塔が白ちゃけて見えるほどの陽光。ワット・ポーはタイマッサージの本山と呼ばれ、境内にある施療所の前には女たちが退屈そうに屯している。

暁の寺院(ワット・アルンラーチャワラーラーム)は、ワット・ポーの対岸にそそり立っている。頼りなげな小舟でチャオプラヤー川を渡河する。大仏塔の造形がとても印象的だったから、多くの観光客で混雑しているのだろうと思っていた。船着き場からワット・アルンへ向かう道すがらは人影も少なく、代わる代わる記念撮影を楽しんでいる軍人たちの脇を抜けて、僕らは圧倒的な質量でそそり立つ山のような仏塔の前にたどり着いた。

それにしても、日本の木造寺院と比べて圧倒的に異なるこの質感は、なんと言ったらよいのだろう。ヒンズー教の影響を受けたその造形は、須弥山を現しているんだという。

とにかく僕らは急な階段に取り付き、大仏塔によじ登った。仏塔上部は1周できるテラスがついていて、そこからは対岸の王宮や、チャオプラヤー川を行き来する船を眺めることができる。川面を渡る風が心地よかった。








それにしても、大仏塔下り階段はかなり緊張する。
行きは良い良い帰りは…、だったな。

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