BL作品にしておくには勿体無いだろ!!
ゲイの大村は失恋を機に色事から遠のき、日々を味気なく過ごしていた。いつものように仕事に疲れ自宅へ戻ると、部屋の中にフワフワ浮遊する不審者を発見。不審者曰く「神でいるのが嫌になった。お前、俺を人間にしろ」事態が飲み込めぬまま大村の疲れは極致へ達す…!
嘘か真か神とリーマンのシェア生活、はじまりはじまり。
28歳のサラリーマン大村。
属性はゲイ。
2年前に失恋して以来、殺伐とした生活が続いている。
雷神様は雷遊と名乗り、「少々長生きしすぎてな、神でいるのが嫌になった」
神でいるのが嫌になった!? ∑(゚Д゚)
「だから人間になろうと思う」と言う。
こりゃまたぶっ飛んだ設定をカチ込んできたもんだなー!
神様が神でいることが嫌になったから人間になりたい、って一神教の信者には絶対理解できないだろう。
こうして大村と雷遊の同居生活が始まった。
脱神様を目指す雷遊なんだが、言ってることはすごくストレートで神がかってる。
「お前の持っていたそれは人間達が『愛』と呼ぶものではないのか?」
「世界中のいかなる賢人達が束になったとしても作り出せない至宝だろうが。卑下などするものではない」
「人間達が許さないと言うのならば、この雷遊が許してやろう。その男を愛した事、胸を張って誇るが良い、オオムラよ」
僕はね、昔から一神教の信者に問うてみたいことがある。
「なぜ、あなたの信じる宗教には『悪魔』がいるのか?」
「なぜ、あなたの神は愛に見返り(条件付き)を求めるのか?」
人間が神に求める祝福の一つは「許しと承認」なんだと僕は思っている。
新宿二丁目で同性愛者のキリスト教信者と話したことがある。彼らはいろいろな解釈をすることで、信仰と同性愛との整合性をとろうと苦労していたように見えた。酒を飲みながら、僕は「なんでそんな苦労するの。だったら自分を愛してくれる神のところへ行けばいいのに。そんな狭量な神様、捨てちゃいなよ」と考えていた。自分を認めてくれない神様にネグレクトされるくらいならば、素の自分を受け入れてくれる神様の元へ行けばいい。素の自分を受け入れてくれる神様にだったら、苦しむことなく愛を捧げることもできるだろうに、と。それを許さないから、一神教は「悪魔」を作り上げるんだろう。悪魔の話をよく聞いてみたら、悪魔の方こそ真っ当なことを語っているのかもしれない。だが、一神教故にそれは「堕落」とされ、許されないことになっているようだ。
雷遊とドタバタ同居生活を続ける大村の中に、複雑な感情が芽生えて来る。
同じように自我を持つ人間が現れたことによって、触れ合いを求めるようになったこの雷神はなんて寂しい存在なんだろう。
さらっとセリフにしているけれど、これを書ける人はなかなかいないと思う。
神は自己の存在のために人間を必要とし(これは『ノラガミ』でも触れられている)、愛を求めている寂しがり屋なのかもしれない。本来、相思相愛の対等な立場(!)かもしれない神を、誰が、どうして、祭り上げてしまったのか。神の愛を得るために人間の方が犠牲と代償を支払うことが、なぜ当たり前になってしまっているのか?
おにぎりが大好きな雷遊。
ガタイのいい男二人がキッチンで立ち食いもなんだから、大村と雷遊は小さな食卓を買いに出かける。
風邪をひいて寝込んだ大村。
普通の神様なら「早く風邪が治りますように」という願いにしか対応できないけれど、雷遊は卵雑炊を作ってくれる。
人間になりたい神様の話ではあるのだけれど、非常に奥は深い。
そもそも神は人間と対等であり、また、人間は神でもあり、神もまた人間であるという感覚を僕は持っているのだが、それをクリティカルヒットされたような気分だ。
本来、神様と人間は相思相愛で良い関係なんだと思う。畏れ過ぎず、祭り上げ過ぎず、適度の距離感があって……って普段のご近所づきあいと大して変わらないのではないかと。
大村と雷遊には絶対に幸せになってほしい。
1.絵柄
少なくともBL風味ではないだろう。ゲイな自分としてはぜんぜん受け入れられる絵柄。
ちっさな雷遊はかなり可愛らしい。
でっかい雷遊は6パックのマッチョだ。
2.ストーリー
最近のトレンドになっている神様モノとしてはかなり異色。「聖⭐︎おにいさん」は僕には刺さらなかったが、方向性は近いのかもしれない。あと、異文化交流という点ではBL漫画で長くベストセラーになっていた「マザーズスピリット」にも近いかもしれないな。食卓を囲む大村と雷遊の幸せな日常にホコホコする。
3.エロ度
雷遊の裸体はゴージャスマッチョだが、エロはなし。
4.まとめ
文句なしに素晴らしい作品。BLの枠に収まらない深いストーリーに感服した!
長く記憶に残る作品になることだろう。
全力で応援したい!
絵柄 :★★★★★
ストーリー:★★★★★
エロ度 :☆☆☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)
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