BL漫画レビュー:倫敦巴里子『隣のスパダリくん』

昭和のホモ漫画っぽい匂いがする倫敦巴里子の新作。

彼女になじられ婚約破棄された不運のサラリーマン・佐藤。
どん底に落ち込んだとき、甘い言葉とおいしい食事を差し出してきたのは、隣の部屋に住むイケメンモデルの佐藤でー!?
同じ名前でスペック真逆★な高校生モデル×三十路の地味リーマンの年の差&格差ラブをはじめ、ヤクザ×高校生の恋の駆け引き、ある男の妄執に囚われる大学生など、エロスからホラーまで珠玉の読み切り満載!!

完璧ダーリンな年下男子にココロもカラダも餌付けされちゃった!?

倫敦巴里子の絵柄はわりと好きだ。
アニメっぽい顔立ちは昭和の匂いが漂ってくる。
BLというより、10年か20年くらい前に、Badiあたりでほんわかハッピーゲイライフ漫画でも連載していたら、かなり流行っただろうなあと思う。細マッチョな身体にやや童顔の顔が乗っかっていて、悪くないと思う。

タイトルにもなった「隣のスパダリくん」の佐藤×佐藤。
婚約を破棄された三十路のサラリーマン佐藤と、モデルで現役高校生佐藤は、東京のとあるマンションでお隣さん同士。サラリーマンを餌付けしている動機が「仕事も学校も休みがちだから友だちなかなか出来なくてさ」という緩さ。




「どうもお前といると愚痴っぽいな」
「なんか淋しいなあ。僕は少なくとも佐藤さんといるのが楽しいし幸せなのに」

んー、なんだろう。
実はこの話は、あまり刺さってこないんだ。
それは上のセリフが示しているように、高校生佐藤の方がリーマン佐藤を好きなのだが、切っ掛けも、好きになったポイントも、なにも明らかになっていなくて、ただ「楽しいし、幸せ」と言っているのみ。ボロボロのサラリーマンに同情した高校生が、流されて身体を重ねてしまった……みたいな行きずり風でもなく。高校生佐藤はわりと将来のビジョンを持って暮らしているし、派手な人生を送りたいわけじゃないリーマン佐藤は、淡々とリーマン生活を送っているしで、もうちょっと馴れ初めとかないと……物語が滑ってしまっている。

リーマン佐藤は別れた女の婚約指輪を売って、高校生と高級すき焼きを食う。別れた彼女とは、年齢を含めたある種の妥協の結婚にも幸せはあると想像していたけれど、醒めてしまったあとは、もう気持ちは戻らない。食欲を満たしたあと、「佐藤さんが僕を幸せにしてくれる。だから僕も佐藤さんを幸せにしてあげる……僕に恋して」と年若い高校生に口説かれる。そしてベッドに中で迎える土曜の朝。

んー、佐藤×佐藤の間に動機とエピソードがなさ過ぎて、突っ込みようがない。
消化不良すぎて、今夜は眠れないかも。

1.絵柄
細~マッチョなボディに童顔が乗っていて、僕は好きだね。

2.ストーリー
佐藤×佐藤は設定が適当なのか、ヤクザ×高校生は人間関係をもっと整理した方が頭に入ってくるのになと思った。21世紀になってから恋愛至上主義、ほとんどがハッピーエンドというご時世で、バッドエンドの大学生モノを発表した心意気は買いたい。

3.エロ度
「逢瀬も二度目ともなれば……だいぶ後慣れてきたな」ってセリフくらいかな。エロイ身体を描けるのだから、もっとサービスしても良いと思うが。倫敦巴里子の画風だと、肌も見せないプラトニックか、ほとんど服を着ることなしのビッチか、どっちかに思い切り振った方がおもしろい作品が描けるんじゃないか。

4.まとめ
消化不良、ひたすらに。

……ピチピチの高校生と三十路の地味リーマン。
以前だったら高校生ネタとかごちそうだったのに、毎日何十人もの男子高校生とすれ違っているのに、最近の僕自身が男子高校生に興味がわかなくなってしまっている。せっかくの高校生ネタだったのに、時期が悪かったのかもしれない。

絵柄 :★★★☆☆
ストーリー:★☆☆☆☆
エロ度 :★★☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

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