フランス旅行記(2015年) 鷲の巣村エズへ行く

朝ご飯を食べながら、今日一日何をしようかと僕たちは相談を始めた。
今回の旅行はアウトラインはそれなりに苦労して設計した割に、ディテールはその日の気分任せという適当さだった。たった二泊のニース滞在なのに、モナコへ行くのか、マルセイユへ足を伸ばすつもりなのか、計画すらなかった。

モナコは美しい街だけど、まあね…、という彼氏の感想があり、そして明日、西進するのに今日マルセイユまで足を伸ばすのに僕は気が進まなかった。ゴッホが好きな人はアルルとか行くのだろうけれど、それほど思い入れのない僕ら……というか、コート・ダジュールには何しに来たのだろう??

とにかく二人とも行ったことがない場所で、そこそこお手軽な場所と言えば、エズの村があった。じゃあエズへ行こうということで、僕らはガイドブックを広げる。まずは中距離バスの発着所に行かねばならない。バスターミナルはVaubanというらしい。このカフェから歩いて行くのは……まあかなり大変なので、マセナ広場からトラムに乗って行くことにした。マセナ広場から乗車したトラムは、アポロンの像の前を曲がり、ゆっくりと坂を上って行く。いくつかの停留所を過ごしたあと、僕らはVauban駅で下車した。

僕らのほかに降りた客は二人という静かな駅。目の前には広大な駐車場が広がっている。ここがバスターミナルかと思いきや、少々歩く。鉄道の線路を潜るトンネルを越えた先にバスターミナルがある。ここが始発。


僕たちが乗車した112番バスは、ニース市街地の何カ所かでお客を拾ったあと、郊外へ向かって山道を登る。海岸線はどんどん遠くなり、地中海が窓いっぱいに広がる。沿道の漆喰塗りの門塀が強い日差しでハレーションを起こしていて、その塀にもたれ掛かるブーゲンビリアの赤が鮮烈に映る。

バスに揺られて20分ほどで、Eze Villageのバス停に到着する。乗っていたお客のほとんどがここで下車するから、降り損なうことはたぶんないだろう。

大きな街路樹が濃い影を落としていた。
モナコとニースの、それぞれの方向を示す道路標識に、なんだか強烈に南仏にいることを意識させられた。ニース発のバスを下車した乗客たちは、あっという間に散っていった。ミネラルウォーターを買うためにバス停付近をウロウロしていた僕らは、ちょっと心細くなる。バス停付近の人影はまばら。強い日差しを浴びた南国の花が咲き誇っている。






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