さて、「このBLがやばい!2015年度版」の6位に「スニーキーレッド」というSMネタのマンガが入っている。話題になっているので一度読んでみたが、正直理解の範疇外だった。で、おそらくこの「夜はともだち」も来年の「このBLがやばい!」にエントリーされうる作品なのだと思う。「スニーキーレッド」よりはわかりやすいから。
いたぶること
唯一ゆるされた
愛しかた
顔は可愛いのに無口で無表情でミステリアスな飛田くん。
飛田くんが実はゲイでドMだと知った真澄は、サド役をかってでることに。
プレイ終了は2人の繋がりも解消されるとき。
しかし真澄はプレイメイトという限定された関係以上を期待するようになって--。
とびきり間口の狭い愛し方だな!!
ゲイの一人としてそれなりに歳を取ってきたけれど、SM方面のことはさっぱり分からない。でも新宿二丁目でお酒を飲んでいると、時々SMの世界にいる人たちの話を聞くことがある。彼らは用心深いから、おもしろおかしく行為について語ってくれるけれど、その行為の先にある「何か」について語ってくれることはなかった。もっとも僕が話を聞いた人々にカップルはいなかったので、SM指向の人々の「愛」については聞き出し得なかったのかもしれない。
それにしても、ゲイ+真性ドMの飛田くんはなんて生きづらい人生なのだろう。ゲイだってマイノリティなのに、+Mの属性まで満たそうとしたら、どれだけパイの狭い世界になるのだろうか。飛田くんは軽度の自閉症…と言ったらいろいろ差し障りがあるのだろうけど、要は僕らが「普通」と考えるインプットとアウトプットが、あるレンジを振り切って関係性を失い、対人コミュニケーションに支障を来すのと似ているような気がする。
真澄は飛田くんを喜ばせてあげたいと願う。だけど飛田くんを喜ばすためには彼をいたぶらなければならない。本来真澄はそれ望んでいない。飛田くんがイッた後は、ゲームオーバーと言わんばかりに行為は打ち切られる。飛田くんを喜ばせてあげたい、あるいは飛田くんから喜ばせてもらいたいという真澄の気持ちは宙ぶらりんのまま放置される。いっそ、真澄が鬼畜のドSだったら良かったのだろう。だけど真澄は「普通」の男子だったのだ。
飛田くんは、自分は淫乱ではないという。
ただ、虐められるセックスが好きなだけだという。
「普通って何?」っていう問いかけが重い。
普通とか常識なんて、そんなものは幻、そんなものは実在しない思い込みだと主張するのは簡単なことだと思う。だけど、真澄がその問いかけを飛田くんに投げかけない間は、飛田くんにとって真澄は自分の身体に縄を巻き付ける腕だけ、ペニスをさする足だけ、アナルから侵入してくるペニスだけ…つまりパーツに過ぎなくて、「真澄」にはなんら興味を示さない。いや、興味を示していないわけではないのだろうが、相手に伝わってこないのだ。ふたりがただのセフレで、プレイの後はシャワーを浴びてとっとと別れる関係だったら拗れなかった。だけど真澄は興味本位からだんだん相手に愛情を感じるようになり、そして相手から愛情が戻ってきているように感じられなかった。サド役は奉仕する立場で、マゾの要求を聞き続ける立場であり、真澄は心はどんどんすり減って行く。第5章ではじめて飛田くんは問いかける。「真澄はどうしたいの?僕にどうして欲しいの?」
端から見ていればSMなんてかなり特殊で、ゲイの僕ですら近寄れない人たちだ。何が普通か、何が正しい愛情、正しい行為なのかは人それぞれだと思う。だけど、気持ちは通じ合っていて欲しいと思う。真澄はこう言う。「僕は飛田くんといるときだけ すごくこわくて すごくさみしかったから」「飛田くんはきっと俺を傷つけるから」。
1.絵柄
凄く独特。各章の扉絵もダークな心象世界をのぞき込んでいるかのよう。
2.ストーリー
ドMな同級生に惹かれたとある大学生の話。正直SM系はよく分からん。だけど、物語の最後で真澄からの連絡だけを待っていると約束した飛田くんが、真澄に会いに来る「真澄がいないのがさみしくて……一目でもいいから会いたくて」。これで読者は救われるんだろうなあ。「俺だけだと思っていた。さみしいのも怖いのも全部 俺だけが感じてるって」と飛田くんを抱き合っている真澄に、唐突に金星の話を始める飛田くんは、やっぱりずれてるんじゃないかと。長続きしなさそうな関係のような気もする。
3.エロ度
血は飛ぶし、縛られるし、足扱きで「イッ いくっいくっ イきます もぉ!!いってもいいですか」と涙目。どう論評して良いのやら…刺激強いです。
4.まとめ
あ~あ、なんでこんな難しいネタを触っちゃったんだろう。ボーナストラックで真澄は飛田くんからキスされる。「どしたの急に……」という問いかけに「俺がこういうのすると真澄喜ぶみたいだから」って、あんたロボットかよ!?
絵柄 :★★★☆☆
ストーリー:★★★☆☆
エロ度 :★★★★☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)
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