BL漫画レビュー:ヨネダコウ『NightS』

午前中まで嵌まっていた問題のコードが完成して、今夜はいい気分。
車検に出していたスカイラインも戻ってきたので、NightSを書評してしまおう。

「今一瞬、アンタにむしゃぶりつきたくなった」

運び屋の唐島は、どこか秘密めいていて色気のあるヤクザ・穂積の仕事を引き受ける。
惚れて、探って、騙して、裏切られ……はぐらかされた本心はいつも見えないまま。
黒社会の駆け引きと大人の恋の心理戦は、やがて息を呑む圧巻のラストへ-。

他、笑わない営業マンと整備士それぞれの視点で紡がれる「リプライ」、男子高校生の恋の始まりを爽やかに描いた「感情スペクトル」、描き下ろしも収録した、男と男の感情を精緻に描いた傑作集。

「男と男の感情を精緻に描いた傑作」……今は亡き「さぶ」だったら「男と男の滾りを精緻に描いた傑作」とか帯にしちゃうんだろうな。

腐女子の黒社会好きはどうしても理由が分からないで、今日取り上げるのは『笑わない営業マンと整備士それぞれの視点で紡がれる「リプライ」』の方。

最新作「それでも、やさしい恋をする」と「リプライ」は比べて論評されることが多いようだ。僕は出口晴海がグダグダとめんどくさい「それでも、やさしい恋をする」の方が好きだが、「リプライ」を支持する腐女子は圧倒的に「ちゃんと仕事が描写されている」点を評価しているようだ。うん、僕も同意しないわけではない。ただまあ、仕事の描写がしっかりしている分、「リプライ」にはゲイシーンを挿入する余地はない。「それでも、やさしい恋をする」に仕事シーンを加えすぎるとバランスが悪くなる。ヨネダコウのその辺の割り切りは適切じゃないのかな。

ゲイの僕が出口晴海のような「かわいい男」を愛でたい視点と、「仕事の出来る男」を評価したい腐女子のあいだにはなかなか深い谷がある。ゲイが少女マンガ寄りのロマンスを好むのに対して、腐女子はもっとリアリストなのかもな。

「……さっき、関さんの指先見てて、俺が見てきたメカニックの中で一番荒れてるなって思いました。かっこいいっていうのはそういう事だと思います」

こういうセリフは男のもの。オカマには吐けないんだよなあ。
仕事で一杯いっぱいになっていた関の気持ちに、この言葉がすっと入ってくる。
そして高見のことを好きになって行く。

「それども、やさしい恋をする」では、こういう決定的なシーン、小野田の気持ちが動く決定打のシーンがないことが不満の人もいるようで。うーん、その意見もまた分からんではないんだよなー。

で、一度告白した関の気持ちは届かなかった。
でも、いろいろあって高見から告白を受けたとき、オイルで汚れた手では抱き返せなかった。その関の繊細さが、腐女子には好まれるんだろうなあ。


で、つなぎの下には色々と秘密があると。


実はスカイラインは予定より2時間以上も遅れて納車された。なんかメンテしたらアイドリングの数値が変わってしまい、制御コンピュータの書き換え作業が手間取ったらしい。セミロンのエンジニア3人がエンジンルームをのぞき込んでいる後ろ姿を眺めながら、僕の頭の中は「リプライ」が妄想されていたのだった。

1.絵柄
安定のヨネダコウ クオリティ。
車のデッサンが狂っていないのがすげーと思う。なんとなくホンダっぽい。

2.ストーリー
運び屋ネタ、男子高校生ネタはさておき、リーマンものが好きな人は「それでも、やさしい恋をする」と読み比べるとおもしろいと思う。

3.エロ度
つなぎの下にはエロイ身体が隠されてるよ!

4.まとめ
すごく地味なんだけど、すごくいい。高級テーラーメイドのスーツのように、素材の良さがきらりと光っているオススメの逸品。関と高見の視点で別々に描かれる前後編が、なかなかいいのだ。二人がそれぞれ相手を好きになるプロセスがとても丁寧に描かれている。

絵柄 :★★★★★
ストーリー:★★★★★
エロ度 :★★★☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です) 

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