今回のバンコク行きでの懸念は、直前に飛び込んできた父親の怪我を除けば、昨年から断続的に続いている反政府デモの動向だった。1月13日から首都封鎖デモがあると聞き、在タイ日本大使館のWebサイトに掲載されていた地図にアクセスした僕らは、思わず唸った。クラウンプラザホテルが封鎖ポイントの一つじゃないかと。
首都封鎖デモ(Shutdown Bangkok)は、市内7カ所の交差点を占拠する。それはガバメントコンプレックス、ラープラーオ交差点、戦勝記念塔、パトゥムワン交差点、ラチャプラソン交差点、アソーク交差点、ルンピニ公園。僕らは当初官公庁街、王宮付近でデモするもんだと考えていて、自分たちは無関係だろうと高をくくっていた。
1月11日夕刻、バンコク入りした僕らは、爽やかな気候に包まれてはしゃいでいた。
だけど13日以降は、場合によってはスワンナプーム国際空港付近へホテルを移すことも考えなきゃなとか、ホテル移動はなくとも最終日の空港までの足をどうするかなど、食事をしながら話し合い、情報収集に努めていた。サイアムで買い物したいという彼氏の用事は1月12日中に済ませた。最悪13日以降はホテルに缶詰だ。彼氏の同僚さんによると日本人の間では食料備蓄を推奨するメールが出回っているとか。そんな不穏な空気が漂っているサラディーン駅付近は、週末だというのに通行人の数が明らかに少ない。これはやばいことになるかもなあと、そんなことを言いながら僕らは眠りについた。
朝、遠くから響いてくる叫び声に起こされた。
朝5時だった。
カーテンを開けると、窓の外は雲が切れて、ねっとりと朱に染まった朝焼けが広がっている。黒い影のような高層ビルを朝焼けが染め上げてゆく光景は、悪魔が降臨するニューヨークを描いたハリウッド映画のようなおどろおどろしさだった。
目をこらすと、デュシタニバンコクホテルの前にバリケードが築かれていて、ラーマ4世通りを走る車はそこで追い返されている。シーロム通りもバイクしか走っていない。バンヤンツリーホテル方面に向かうサラディーン通りは、タクシーが動いている。あちら方面には抜けることができるらしい。
すぐ近くでホバリングしている警察のヘリコプターが見える。
部屋を出て、31階フロアからルンピニー公園が見える場所まで移動してみた。
公園入り口には大きなステージが出来ていて、おっさんがアジ演説を絶叫している。
国旗を振る人たちの姿。
ステージの後に見える無数の野宿テント。
地上でなにが始まっているのか。
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