桟橋を離れると、船はエンジンを吹かし、船首をやや持ち上げて水上を突っ走る。時々他船の引波に乗り上げると、ボン・ボンと水面を跳ねる。瀬戸内海は縦横に船が動き回っているので、僕らはなんども水面をジャンプすることになった。
広島湾へ流れ込む三本の川の一つ、本川の河口に到達すると船はスピードを落とす。「よかったらデッキへ出られませんか?」というアナウンスに誘われて、僕たちはデッキに上がった。東京の隅田川水上バスで橋潜りを楽しんで以来、「おお、すげー!」と歓声を挙げるのが好きになってしまった。その橋のうち一本が水面からの高さがとても低い。「立ち上がらないでください!」と注意され、首をすくめながら橋梁を潜る。確かに背の高い人が立ち上がったら、確実に頭をぶつけそうだ。
川岸に僕らが乗っている同型船が係留されている。もともと平和公園から宮島へ向かう便なのだが、今日は満潮の時間と重なって、先ほどの橋が潜れずに欠航となったという。僕らに向かって手を振る同僚を見ながら「あいつ、仕事の始まりが遅かったから、今日は残業だな」と簡単な観光案内をしてくれている船員が言う。自然環境の影響を受けながら仕事する職業の人たちが少し新鮮に見えた。
大きな橋の手前で、船は右手に舵を切った。
その先に原爆ドーム(旧広島県産業奨励館)が現れる。
第一印象は「案外小さいな」であった。
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