標高3400mの場所にある。
予定時刻から1時間遅れての到着だった。
登山靴を入れる袋を手渡され、ザックを担いだまま2階へ続く階段に誘導された。19時になったばかりだというのに、すでに大鼾をかいて寝ている人がいて驚かされた。今夜の寝床は蚕棚の上、6人の人が並んで寝て、その足がずらっと並んだ下に僕一人分のスペースがあった。他人の足の下で寝るのはいい気分はしなかったけれど、隣はカーテンで仕切った廊下なので、身体を横向きにして眠ればそれほど悪くない。寝返りを打ってぶつかってくる隣人もいないし、鼾の元からだって多少は離れているし。
靴袋を置き、フリースを脱いだ。ふと上を向くと柱にフックがあった。そこにザックを架けた。なんだかほっとして、座り込んでしまった。
靴下を、足の指を動かしてみる。幸いにも靴擦れ、マメもできていなかった。ちゃんと足に合った登山靴を買ってよかったと思った。
汗で湿ったシャツを着替えた。そして、山小屋の外にあるトイレに行く。入り口で200円を払う。一応水洗。個室で下着も替えて、さっぱりした。
山小屋に戻ってくると、すでにパーティの人たちは晩ご飯を食べ始めていた。あわててテーブルの端っこに座る。ハンバーグ付きのカレーライス。お茶は一杯サービス。紙に包まれているのは、明日の朝食の弁当だという。各人寝床に持ち帰って保管。お昼ご飯を満足に食べていなかったので、空きっ腹には美味だった。ここでビールでも頼みたいところだったが、この後に夜間登山が控えていることもあってガマンした。
食事中に山小屋のスタッフが、貸し防寒着のセールスをする。借りた人は皆良かったと言った、というセールス文句にだまされたつもりで僕も借りた。外側はゴアテックス、内側は起毛した素材が使われている。冷たい風を通さなさそうだ。
食事を終えたら、あとは寝るだけ。
生まれて初めてのシュラフに潜り込む。
フックに引っかけた山小屋で借りた防寒着と、レンタルで地上から持ってきたミズノ製のフリースをシュラフの中から見上げた。なんでも初めての経験。自分の居場所が少しだけ快適になる喜びをかみしめて、僕は浅い眠りに落ちた。
夜半、激しく屋根を叩く雨の音で目覚めた。
ドーン、ドーンと耳元で轟く雷鳴が、登山者達をおののかせた。
時刻はちょうど0:00を過ぎたところだった。
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