ソレントへの道 2011年欧州旅行記-18

スーツケースの車輪が石畳にあたってゴトゴトと陽気な音を立てている。まずはローマからナポリへ移動だった。チケットを買おうにも窓口は長蛇の列になっていて、日本人は自然と自動販売機を使うことになる。しっかしこれがまた微妙に操作がわかりづらく、彼氏と悪戦苦闘していると、横からロマ族っぽい女性がサポートをしてくれる。もちろんタダではなく、イラッとしながら彼氏がチップを渡していたのが印象的だった。旅に出るといろいろあるなあと思いつつ、僕らはプラットフォームに向かった。

一番早く現地に到着するユーロスター・イタリア(Treni Eurostar Italia, ES)は二等席が満席の上、バカ高かった。僕らはそのあとに出るインテルシティ(Inter City)で移動することにした。プラットフォームにはミラノへ向かうアルタヴェロチタ(Alta Velocita)が入線していたりするのだけれど、1時間後に出発する僕らのICは、いまだにどのプラットフォームに現れるのかも分かっていない。日本の鉄道事情に慣れている僕には、いったいどうなるのか不思議でならない。こんな運用で本当に大丈夫なのか?

電光掲示板を前に、僕らはずいぶん長いこと待たされた。それでも行き交う旅行者の姿を見ているのは楽しかった。ある人は僕らと一緒に南イタリアへ行くのだろう。またある人は北イタリアを抜けて、ドイツやスイスを目指すのだろう。陸続きで他国へ行ける環境は日本人にはちょっと新鮮に感じられる。

ICが入線すると、僕らは大急ぎで1等車の車両を探す。切符は持っていても別に指定席というわけではないので、早い者勝ち。慌てていたのと、列車があまりに長いのでテルミニ駅での写真はなし。僕らは6人乗りコンパートメントの窓側を占領して、テルミニ駅を出発した。

テルミニ駅を出発して、チャンピーノ空港を過ぎ、しばらく走ると列車の進行方向左手に有名なローマ水道のクラウディア水道橋が現れた。さらに走って行くと、右手には松の並木が一直線に伸びるアッピア街道が遠くに見えた。

イタリアの鉄道の旅は快適だった。噂とはちがって、時刻通り列車はイタリア半島を南下して行く。田舎町を眺めながら快調に走るICに揺られて2時間弱、やたらに近代的な高層ビルが建ち並ぶナポリへ到着した。僕らの乗ってきたICは、ここから8時間以上もかけて南へ向かうという。どこへ行くのだろうと調べてみたら、シチリア島へフェリーに乗せられて移動するらしい。なにも無理に鉄道を使わなくても……と苦笑してしまう。


ナポリ駅は近代的で美しい駅だった。でも僕らはさっさと素通り。スリが危ないと彼氏が警戒していて、スーツケースをガラガラと引っ張って足早に移動する。ナポリでは乗り換え。切符を買ってチルクムヴェスヴィアーナ鉄道(Ferrovia Circumvesuviana)……ヴェスヴィオ周遊鉄道に乗る。時間があったのと、ナポリ駅での乗客が多かったので、始発駅まで移動した。


この鉄道、見ての通り落書きだらけ。暑い南イタリアにもかかわらず冷房なし。窓からは地中海の日差しが容赦なく照りつけ、じりじりと肌を焦がしてゆく。ナポリからぎっしりと乗り込んできたお客はポンペイでほとんど降りてしまう。陽気なナポリターノというか、車両の中で怒鳴り合っているようにしゃべっているお爺さんたちの声に悩まされながら約1時間。終着駅ソレントに着いたときにはぐったりしてしまった。

僕らの車両は途中、他のお客が下車して行ってしまい、相客は地元の柄の悪そうな若者だけになってだいぶ緊張した。できるだけ他の旅行客もいる車両に乗車した方が安全だと思った。

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