戦場の情景

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hiyokobutaさんのコメントに、おじいさまが戦争について語る姿がなにやら楽しそうだったという書き込みがありましたね。おそらく兵士一人一人経験してきた環境が違うから一概に言うことはできませんが、ずいぶん時間がたち ましたし、戦友と共に過ごした青春時代の記憶は、あるいは楽しかった部分だけが残っているのかもしれません。当時は海外領土も広大で、日本という国は今では想像できないスケールを持っていましたから。亡くなった叔父たちも若い頃にずいぶん海外を遊学していて、とんでもないエピソードを聞かされたりもしましたよ。

僕が勤務していたオフィス街には、"戦友会"のような人々が集う不思議な場所がありました。みんなお歳を召した方々なのですが、元気で明るくて、そしてよく涙ぐんでいる姿を目撃しました。僕らには入ってゆけない濃密な人間関係を垣間見たような気がしました。

話は変わりますが、作家の"福井晴敏"は僕と同年代ということもありチェックしています。彼の作品に"終戦のローレライ"があります。ローレライ自身はアレなんですが(苦笑)、非常に映像的な文章でたたみ込んでくる福井マジックには、抗いがたい魅力もあります。ハードカバー下巻の始まりにこんなシーンがあります。

主人公である少年兵征人は、異国からきた少女パウラの手を引き、浮上航行している潜水艦の艦橋甲板に連れ出す。長い間薄暗い潜水艦の中で過ごしてきた彼女に、茫漠と広がる海原、水平線から離れたばかりの太陽、入道雲を沸き立たせた青い空と、そのひとつひとつが鮮明に輝く世界を見せたかったのだ。艦首方向から吹き寄せる風に身を任せながら「もう、これでいつ死んでもいい……」とつぶやく少女に、少年は歌う。

名も知らぬ遠き島より……
流れ寄る椰子の実ひとつ

もちろん少女が潜水艦内に潜んでいることは秘密。彼女を甲板へ連れ出すことももちろん厳禁だっただろうが、伝声管を通じて館内に伝わってしまった椰子の実の歌を、乗組員たちはそれぞれの持ち場でそれぞれの想いを胸に抱いて唱和するのだ。

いずれの日にか国に帰らん……

後半に続くインターミッションのような場面。
とても映像的で、僕は何度読み返しても泣けるんですね。

ローレライは実写映像化されました。もちろんがっかりするだろうから観てません。
だが、しかし。もともとアニメのノベライズもやっていた福井晴敏。そもそも描写がきわめてアニメーションのカメラワークを連想させる構造をもっているんですよ。
なのでいつもジブリのキャラクターでこの情景が浮かんできてしまう(苦笑)。大体のキャラをはめると征人はパズー、乗組員はマンマユート団のみなさん(ドーラ一家でもOKですが)、パウラはそうだなぁクラリスですかね? とまぁ、ジブリ好きな人に分かってもらえるとうれしいんだけどな。

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