不定期復活なBL書評 ^^;
というか、書きたいときに書く程度の心持ちでやっていれば良いわけで。
今日の素材は 西村しゅうこ 『騎士堂倶楽部』
かつての恋人・達哉と再会した優輝は、賭け試合が行われている秘密倶楽部へ連れて行かれる。未だに達哉への想いを断ち切ることができない優輝は、そこで達哉の『駒』となる契約を結ぶが──。 過去に囚われ、素直に愛し合えない男たちの無器用な恋の行方は──!?
というか、ヘンなタイトル。(苦笑)
"騎士道"ならまだしも、"堂"なんて付いた日には、駄菓子屋かお茶屋をイメージするもんだ。
この話、本質的には"Fight Club"。 金持ちに飼われたファイターが秘密倶楽部のリングで闘う。勝者には栄光を。敗者には衆人環視の中でその肉体に陵辱を……わかりやすいなぁ。一子相伝の秘技 (沢村流柔術)を受け継ぐ優輝は、幼なじみの達哉の駒として拾われ、足の故障を押して戦い続けるが……というストーリー。
ボーイズラブってのが、女性が読む恋愛物語だとすれば、これはもう身体を張って愛をもぎ取るか、あるいは身体を張って愛に身を捧ぐかって話だから、読者は優輝のけなげさに萌えちゃうんだろうな。"駒"たちは皆、オーナーから与えられたペンダントを着けているんだが、ライバルの悪戯で優輝はそれを失ってしまう。3日ぶりに 現れた彼の胸元には、達哉の名前を冠したタトゥーが入れられていて……オレはあんたのものだという最強の宣言に、恋敵が嫉妬に狂う姿がまた壮絶。
他の書評では、優輝のけなげさを指摘している方が多い。
でも。本当の見所は、優輝のライバルとして登場する"司"だと思った。
優輝、達哉、司の三人は沢村流柔術で結ばれている。
優輝の父が師範。優輝と達哉は一緒に柔術を学び、司は達哉から柔術を教わる。司は孫弟子ということになる。そして司は達哉の"駒"になることを熱望するものの、受け入れてもらえない。だから、倶楽部を仕切る老人の駒となり、身体を弄ばれている。司が倶楽部ナンバーワン・ファイターなのは、金のためでも、名誉のためでもなく、ひたすら達哉を想う気持ちに突き動かされているのだ。
「一度でいいんだ
一度抱いてくれたら
桂木さんの事 この身体が憶えるから……
そしたら……
そしたら たとえ
どんな人の駒だろうと やっていける…」
司の血を吐くような告白だ。
でも達哉が司を抱くことはない。
続くストーリーの中で、達哉をめぐって二人は戦い、優輝は敗れ、そして司は沢村流柔術の継承者になってゆく。
優輝 V.S. 司の試合が終わったあと、達哉は司のオーナーに頭を下げ、司を譲り受けて世界に通用するファイターに育て上げようとする。
「誇りなんだ……
桂木さんが…
最後にくれるものは……」
司の過去についてあまり触れられていないが、幸せな家庭に育ったという感じではない。なにも持っていなかった司(といっても美形なんだが)に、生きるすべを与えてくれた人。親であり、師匠であり、恋いこがれる相手、でも恋人にはなってくれない人……司にとって達哉はそんな存在だ。
達哉は司の求愛には応えられない。代わりに格闘家としての誇りと、そして格闘家として生きていくための技をすべて司に与えようとする。司にとってはなかなかつらい愛の形だ。しかし「誇りを与える」という形で注がれる愛も、深く、静かで、激しいものではあるまいか?恋人としては受け入れられないけれど、一人の男の人生にコミットしてゆくという意思表示であるから。
1.絵柄
うまいと思います。僕は好きですね。
男性の身体をとてもきれいに描けている人だと思います。
2.ストーリー
もともと単行本としては通常の2倍の分量があり、細かいディテールまで描き込まれていて読者を飽きさせません。優輝の敵役として司が登場しますが、彼の愛を乞う姿が僕には刺さりました。
3.エロ度
激しいです。体当たりで達哉に愛を乞う司がせつないです。
(今回はヒール役に肩入れしています)
4.まとめ
いわゆる"ボーイズラブ"好きの人にはウケの良くない作品かもしれません。
でもお薦めです。この人の作品を全部読んでみたいな。
絵柄 :★★★★★
ストーリー:★★★★★
エロ度 :★★★★★
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)
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