"不思議系BL"と呼んだらいいのだろうか?
今日取り上げる作品は 直野儚羅 『夢に飛ぶ鳥』
同時に『囚われの身』も 読んだが、断然内容は『夢に飛ぶ鳥』の方が良いと思う。全体の感じだが、この作家のルーツはもともと黒魔導師なんかが活躍するファンタジーものなのではないだろうか。妖怪、血液、黄泉返り……そんな少しヒヤッとするようなモチーフが取り入れられており、かつ、Hのシーンはとても情熱的かつ濃厚だ(笑)。
絵柄もスクリーントーンがあまり使われてなく、独特の質感がある。なんて説明したらよいのだろう……けっして古くさい絵柄というわけではないのだが、古い時代の少年愛のDNAを引きずっている、最近の明るい主人公が集っているBLとは異なる陰影を漂わせている。正直、僕は直野作品の翳りは好きだ。
この作品集の中で気にいったのは、5作品中タイトルにもなっている"夢に飛ぶ鳥"と"MOMENT"の2つだ。両者とも年の差カップルネタで、後者はさらにBL版"電車男"といったノリだ。共通して"年上男からの視点"で描かれている。
年の差カップネタのモチーフといえば、社会的地位、遠慮、コミュニケーションのすれ違い、若さという問題、経済的格差あたりだろうか。両作品とも、年上男性の"遠慮"と、年下男性の"情熱"がキーになっている。
こ の作品を10代の頃に読んでいたら、その意味をくみ取ることが出来なかっただろう。僕もいい歳になって、通勤電車の中で大学生を見かけると、その若さが醸 し出すなにかに惹かれる自分に気づく。その感情にはいろんな要素が含まれているんだろうが、たぶん自分には失われてしまった"情熱"とか"がむしゃらさ" とかじゃないかと思う。あ、あと彼らの"自意識過剰さ"の部分もあるな(笑)。
"夢に飛ぶ鳥"と"MOMENT"も結局、若い年下の恋人に遠慮して、自分から身を引こうといる年上男の"自己完結"を、年下男が"愛してんだ"って勢いでぶっ壊してゆくところが個人的にとーっても気に入ってしまっ た。まー年上がヘタレで受け身じゃイカンのですけれど、若さの濁流に身を任せて溺れてみたい、ってのもある意味ファンタジーなのかもしれない。
1.絵柄
表紙の絵柄で引いちゃいけません(笑)。面長でセミロンな男性が良く出てくるので、そっち系の顔立ちが好きな人にはいいでしょう。あ、ちょっと前のビジュアルバンド系のルックスと言ったら分かりやすいかもしれない。
2.ストーリー
ファンタジー系です。直野作品は絵柄も水準いってますが、ストーリーでグイグイ引っ張っていくので期待して読んでOK。せつない年の差カップルのストーリーを楽しんで欲しい。うーむ、作品全体を"リリカル"と表現して良いのかもしれません。
3.エロ度
しっかりエロイです。限られた紙面でドラマ部分とH部分をうまくバランスしてます。構成力の点でかなり力のある作家だと思います。でもこの作家は"バックから"が好きなんですね(笑)。
4.まとめ
しっかり読ませるいい作品です。
「一度ヤッたくらいで? ……じゃあ何回すれば恋人って言うんだ!?」
……いいお言葉です。
絵柄 :★★★★☆
ストーリー:★★★★★
エロ度 :★★★★★
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)
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